インボイスと電子帳簿保存法|整備工場が受け取る請求書PDFの保存方法

インボイスと電子帳簿保存法は、どちらも請求書の保存に関わるため一緒に語られがちですが、根拠になる税法と求められる保存方法が違います。部品商のWeb発注で届く請求書PDFや、メールに添付された外注先の請求書は「電子取引」に当たり、所得税・法人税の上ではデータのまま保存する必要があります。この記事では、整備工場や中古車販売店が受け取る電子の請求書を、どの要件で保存すればよいかを、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月版)とインボイスQ&A(令和8年5月改訂版)に沿って整理します。領収書側の扱いは電子帳簿保存法と領収書で解説しているので、ここでは請求書を中心に扱います。

インボイスと電子帳簿保存法の関係

インボイス制度は消費税法の仕組みで、仕入税額控除を受けるために適格請求書を保存する、という話です。電子帳簿保存法は、所得税や法人税などの帳簿書類を電子で保存するときのルールで、電子でやり取りした取引情報(電子取引データ)の保存方法も定めています。同じ1枚の請求書PDFに、二つの法律が別々の角度から保存を求めている、と考えると整理しやすくなります。

項目消費税法(インボイス)電子帳簿保存法(所得税・法人税)
保存する目的仕入税額控除の要件所得税・法人税の帳簿書類の保存
電子で受け取った請求書電子データで保存するほか、書面に出力して保存することも認められるデータのまま保存しなければならない
書面出力だけで済ませる扱い可(一問一答 問29)令和4年1月1日以後の電子取引では廃止(同 問29)
保存期間の目安課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間(インボイスQ&A 問78)税目や書類の種類で異なる(一問一答 問17)

電子帳簿保存法一問一答 問29(令和8年7月版)は、所得税・法人税の保存義務者について、令和4年(2022年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報を書面に出力して保存する措置が廃止された、と説明しています。そのうえで、電子インボイスなど消費税法令で保存することとされている電子データについては、引き続き書面に出力して保存することも認められる、としています。

書面出力が認められても、データは消さない

消費税法の上では電子インボイスを紙に印刷して保存してもかまいません。ところが同じ請求書は、所得税や法人税の上では電子取引データとしてデータのまま保存する義務がかかります。印刷したからといって元のPDFを削除すると、電子帳簿保存法の側で保存義務を果たせなくなります。個人事業者でも法人でも、メールやWebで受け取った請求書は、まずデータを残すことを基本にし、紙は必要に応じた控えと考えるのが安全です。

電子取引データの保存義務と保存要件

電子的に受け取ったり送ったりした請求書や領収書は、データのまま保存しなければなりません(電子帳簿保存法第7条)。一問一答 問30(令和8年7月版)は、その真実性を確保するため、次のいずれかの条件を満たす必要があるとしています。

  1. タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
  2. 受け取った後、速やかにタイムスタンプを付す
  3. データの訂正や削除を行った場合にその記録が残るシステム、または訂正や削除ができないシステムを使って受け取り、保存する
  4. 訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定め、備え付けて、運用する

あわせて、保存したデータを検索できる状態にしておくこと(検索機能の確保)と、データを画面や書面で確認できるディスプレイ等の備付けも求められます。小規模な整備工場で現実的なのは、4番目の事務処理規程を定める方法か、3番目の訂正削除の記録が残るシステムを使う方法です。

パソコンやプリンタを置いていない事業者についても、一問一答 問21が触れています。スマートフォンだけで受け取る場合でも、検索機能の確保と事務処理規程などの備えが必要で、プリンタは近くの有料プリンタなどで速やかに出力できる状態であればよい、とされています。

検索要件が不要になる条件(前々年売上高5,000万円以下)

小規模な事業者には、検索機能の確保を不要とする扱いがあります。一問一答 問21・問51(令和8年7月版)によると、次のどちらかに当てはまれば、検索機能の確保は要りません。

条件内容
売上高の基準個人事業者は前々年(1月1日〜12月31日)の売上高、法人は前々事業年度の売上高が5,000万円以下
書面の整理データを出力した書面を、取引年月日その他の日付と取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている
共通の前提税務調査の際に、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておく

この売上高は、営業外収入や雑収入を含まない金額で、消費税の課税売上高とは異なります(問51)。基準期間がない新規開業の事業者なども、検索要件は不要です。なお、令和5年(2023年)12月31日までに行った電子取引については、基準が1,000万円以下でした。古い解説で「1,000万円」と書かれているのはこの改正前の数字です。

年商5,000万円以下の整備工場であれば、検索のための専用システムを入れなくても、データを日付や取引先が分かるフォルダに入れて保存し、求められたときにそのデータを提出できるようにしておけば、検索の要件は満たせることになります。真実性の要件(上の4つのいずれか)は別にかかる点に注意してください。

電子帳簿保存法の猶予措置の条件

令和6年(2024年)1月1日以後の電子取引には、要件どおりの保存が間に合わない事業者向けの猶予措置があります。一問一答 問93(令和8年7月版)は、保存のためのシステムや社内のワークフローの整備が間に合わないといった事情があれば「相当の理由」があると認められ、データを保存したうえで、データとそれを出力した書面(整然とした形式で明瞭に出力したもの)の提示・提出の求めに応じられるようにしておけば、保存義務に対応できるとしています。

確認したいこと一問一答の扱い
税務署への申請事前申請などの手続は不要(問93)
紙だけ残してデータを消す認められない。データ自体の保存が前提(問22)
システムが整っているのに要件を満たさない資金繰りや人手不足などの理由がなければ猶予措置は受けられない(問93)
用意しておくものデータと、出力した書面の両方を提示・提出できる状態

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの電子取引に設けられていた「宥恕措置」は、すでに終わっています(一問一答 問29)。現在使えるのは、相当の理由がある場合の猶予措置です。猶予措置でも、データそのものを残すことは省けません。

整備工場・車販店で電子取引になりやすいもの

整備工場や中古車販売店の日常業務には、気づかないうちに電子取引になっているやり取りが多くあります。代表的なものを並べると次のとおりです。

やり取り電子取引になる理由保存で気をつけたいこと
部品商のWeb発注システムから出る請求書PDF請求書をデータで受け取っている画面からダウンロードしたPDFを保存する。後から消えないうちに取得する
外注先や陸送業者からメールで届く請求書メール添付のデータで受け取っている添付ファイルを取り出して保存する
ネット通販で買った工具や消耗品の領収書購入サイトで領収書データを受け取っている領収書の扱いは電子帳簿保存法と領収書を参照
オートオークションや業者間サイトの精算書サイト上で精算書のデータを受け取っている場合精算書のダウンロード方法と期限を確認する
自社から法人顧客へPDFで送る請求書送った側も電子取引の当事者になる送ったPDFの控えをデータで残す

インボイスの観点では、受け取った請求書PDFに登録番号が載っているか、税率ごとの消費税額が書かれているかもあわせて確認します。登録番号の照合はインボイスの登録番号を確認する方法、端数処理の見方はインボイスの端数処理で解説しています。

相手が免税事業者で、経過措置で一部を控除する仕入れの場合も、請求書がデータで届けば同じように電子取引として保存します。帳簿側の書き方は経過措置を受けるときの帳簿の書き方をご覧ください。

整備システム・整備ソフトでの保存の確認点

請求書を整備システムや整備ソフトから発行している工場は、自社が送る側の電子取引にも目を向けておく必要があります。法人顧客にPDFでメール送信している請求書は、送った控えもデータで保存の対象です。使っているシステムについて、次の点を確認しておくと安心です。

  • 発行した請求書のPDFや明細データを、後から訂正や削除をした記録が残る形で保管できるか
  • 過去の請求書を日付や取引先から呼び出せるか(前々年の売上高が5,000万円を超える事業者は検索機能の確保が必要)
  • 受け取った部品商の請求書PDFを、整備伝票や仕入データとひも付けて保存できるか
  • システムで要件を満たせない部分を、事務処理規程でどう補うか決めてあるか
  • インボイスの写しを7年間保存できる容量とバックアップがあるか

整備システム・整備ソフト DREAM POWER をはじめ、請求書の発行や保存の運用について相談したい場合は、日本カーネットの無料相談をご利用ください。インボイス制度全体の流れはインボイス制度の概要、システム選びで見るところはインボイス対応の整備システムの選び方にまとめています。

整備工場・車販店が今やること

  • メール添付やWeb発注で受け取っている請求書を洗い出し、取引先ごとに一覧にする
  • 受け取ったPDFは印刷しても削除せず、日付と取引先が分かる名前を付けてフォルダに保存する
  • 前々年(法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下かどうかを確認し、検索機能の確保が要るかを判断する
  • 訂正や削除の防止に関する事務処理規程を作るか、記録が残るシステムを使うかを決める
  • 要件どおりの保存が整うまでの間は、猶予措置の条件(データの保存と、データ・出力書面の提示)を満たしておく
  • 自社が送る請求書PDFの控えも、同じルールで保存する

よくある質問

メールで届いた請求書を印刷して保存すれば足りますか?
消費税法上の電子インボイスは書面に出力して保存することも認められています。ただし所得税・法人税の上では、令和4年1月1日以後の電子取引はデータのまま保存する必要があります(電子帳簿保存法一問一答 問29、令和8年7月版)。印刷しても元のデータは残してください。
小規模な整備工場でも検索機能が必要ですか?
前々年(法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下であれば、税務職員からのダウンロードの求めに応じられるようにしておくことで、検索機能の確保は不要です(一問一答 問21・問51)。この売上高は消費税の課税売上高とは異なります。
猶予措置を受けるには税務署への申請が要りますか?
事前申請などの手続は必要ありません(一問一答 問93)。保存の環境が整っていない相当の理由があり、データを保存したうえで、データと出力した書面の提示・提出に応じられるようにしておくことが条件です。
猶予措置を使えば紙だけの保存でもよいですか?
認められません。猶予措置でも、電子データの保存に代えて出力した書面だけを保存する方法は認められないとされています(一問一答 問22)。
部品商のWeb発注で出る請求書も電子取引ですか?
Webの画面やダウンロードで請求書のデータを受け取っていれば電子取引に当たり、データのまま保存します。インボイスとして使うなら、登録番号や税率ごとの消費税額の記載もあわせて確認してください。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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