インボイス不要で帳簿のみ保存の特例一覧|公共交通機関・自販機・古物商

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるには原則としてインボイスの保存が要ります。ただし、インボイスをもらうのが難しい取引については、帳簿だけの保存で控除できる特例があります。国税庁インボイスQ&A(令和8年5月改訂版)の問104・問110では、令和8年9月1日から加わった特定金属くずを含めて10区分です。整備工場・中古車販売店で関わるのは、公共交通機関、自動販売機・ATM、古物商の中古車買取、郵便切手、出張旅費・通勤手当などです。タクシー、高速道路、コインパーキングは対象外なので、取り違えないよう整理します。

インボイス不要で帳簿のみ保存が認められる取引の一覧(10区分)

帳簿のみの保存で仕入税額控除できる取引は、消費税法施行令49条1項と施行規則15条の4で決まっていて、国税庁Q&A問104では次の10区分です。①3万円未満の公共交通機関(船・路線バス・鉄道・モノレールなど)、②使うときに回収される入場券等、③古物商が登録事業者でない者から買う古物、④質屋の質物、⑤宅建業者の建物、⑥特定金属くず(令和8年9月1日以後)、⑦再生資源・再生部品、⑧3万円未満の自動販売機・自動サービス機、⑨ポストに差し出す切手払いの郵便、⑩従業員の出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当。③〜⑦は販売用の棚卸資産に限られます。

区分整備工場・車販店での例帳簿に住所を書くか
①3万円未満の公共交通機関部品の引取りや研修の電車・路線バス代不要
②入場券等の回収回収される入場券など3万円以上は必要
③古物商の古物の買取お客様からの中古車の下取り・買取(販売用)古物台帳に記載するものは必要
④質屋の質物(質屋業のみ)質屋営業法で記載するものは必要
⑤宅建業者の建物(宅建業のみ)宅建業法で記載するものは必要
⑥特定金属くず届出をした買受業者のみ(令和8年9月1日以後)本人確認が必要なものは必要
⑦再生資源・再生部品再生資源卸売業などの事業者のみ事業者からのものは必要
⑧3万円未満の自動販売機・自動サービス機自販機の飲料、ATMの振込手数料、コインランドリー不要
⑨郵便ポストに出す切手払いの郵便車検案内のはがき(切手で払いポストに投函)不要
⑩出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当整備士の講習会への出張、通勤手当不要

インボイスの公共交通機関特例(3万円未満)の対象と判定

公共交通機関特例の対象は、税込3万円未満の船舶・バス(一般乗合旅客自動車運送事業)・鉄道・軌道(モノレールなど)による旅客の運送だけです(消費税法施行令70条の9第2項1号、国税庁Q&A問42)。タクシー、飛行機、貸切バスは列挙に入っておらず、領収書(適格簡易請求書)を受け取って保存します。3万円の判定は切符1枚ごとではなく1回の取引の合計で、Q&A問43の例では新幹線13,000円を4人分まとめて買った52,000円で判定するため、特例の対象外です。特急料金や寝台料金は対象、入場料金や手回り品の料金は対象外です(問44)。

高速道路の通行料は「旅客の運送」ではないため、公共交通機関特例の対象外です。ETCで払った通行料の扱いはETC・高速道路代とインボイスで整理しています。

自動販売機特例の対象(ATM・コインランドリー)と対象外(コインパーキング)

自動販売機・自動サービス機の特例は、代金の受け取りと商品・サービスの提供がその機械だけで完結するもので、税込3万円未満の取引が対象です(基本通達1-8-14、国税庁Q&A問47)。飲料の自動販売機、コインロッカー、コインランドリー、金融機関のATMでの振込は対象です。一方、コインパーキング、精算だけを行うセルフレジ、券を出すだけの自動券売機、ネットバンキングは対象外です。コインパーキングは駐車場業として適格簡易請求書(レシート)を出せる事業なので、精算機のレシートを保存します(問47の参考)。

セルフ洗車機やセルフ式ガソリンスタンドの給油機がこの特例にあたるかは、国税庁の資料に名指しの説明がありません。給油は精算機で支払う形が多く、精算だけの機械はセルフレジに近いとも読めるため、レシート(適格簡易請求書)を受け取って保存しておくのが確実です。3万円未満の判定は1回の取引ごとで、自販機の150円の飲み物を20本買っても1本150円で判定します(問110-2)。

古物商特例で中古車を帳簿のみで控除する条件

中古車販売店(古物商)が、一般のお客様や登録していない事業者から販売用の中古車を買い取る場合は、帳簿だけで仕入税額控除ができます(消費税法施行令49条1項1号ハ、国税庁Q&A問106)。相手が登録事業者ならインボイスの保存が必要です。対象は販売用の棚卸資産に限られ、社用車や代車として買う中古車は対象外です。

古物営業法では、買い取りの対価の総額が税込1万円以上なら古物台帳に相手の住所・氏名などを書くため、帳簿にも住所・氏名が要ります。古物台帳と、特例にあたる旨を書いた総勘定元帳などを合わせて保存すれば要件を満たし、古物台帳も7年間保存します(問110)。要件の詳細は古物商特例とインボイス、社用車として買う場合などは個人から車を買うときの消費税で解説しています。

整備工場が修理に使うリサイクルパーツを、登録していない業者から買う場合に⑦の再生部品の特例が使えるかは、事業の要件(再生資源卸売業など、不特定多数から買い受ける事業)を満たすかで決まり、国税庁の名指しの説明はありません。通常の整備工場はこの要件にあたらない可能性が高いため、インボイスの保存か、経過措置(2026年10月以後は70%)で考えておきます。

郵便切手・出張旅費・通勤手当の帳簿のみ保存

切手だけで料金を払い、郵便ポストに差し出した郵便は帳簿のみで控除できます。窓口で出す郵便は対象とは読めないため、窓口のレシートを保存します。自社で使う切手を買ったときに経費にしている処理は、インボイス制度のもとでも続けられます(問100)。

社員に払う出張旅費・宿泊費・日当は、旅行に通常必要と認められる部分(所得税が非課税になる範囲)が帳簿のみで控除でき、実費精算でも対象です(問107・問107-2)。通勤手当は、通勤に通常必要と認められる部分なら、所得税の非課税限度額を超えているかどうかに関係なく対象です(問108)。出張旅費は所得税の非課税の範囲で判定し、通勤手当は限度額を問わない、という違いを取り違えないようにします。

帳簿のみ保存の特例で帳簿に書く事項

帳簿のみ保存の特例を使うときは、通常の帳簿の4項目(相手方の氏名・名称、取引年月日、内容、支払対価の額)に加えて、どの特例にあたるかを示す旨と、必要な場合は相手方の住所または所在地を書きます(消費税法施行令49条1項、国税庁Q&A問110)。Q&Aの記載例では「3万円未満の鉄道料金」「自販機」「ATM」のように書けば足ります。公共交通機関・自販機・郵便・出張旅費・通勤手当は住所の記載が不要で、古物商の中古車買取は古物台帳に住所を書くものなら必要です。「帳簿のみ保存なら普段の帳簿のままでよい」わけではない点に注意します。

基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、2029年9月30日まで、税込1万円未満の仕入れ全般を帳簿だけで控除できる少額特例も使えます。こちらは帳簿に特例の旨を書く必要がありません(問111)。

整備工場・車販店が今やること

  1. 交通費・駐車場代・自販機・ATM手数料の経費処理で、特例の対象と対象外(タクシー・高速道路・コインパーキング)を分ける
  2. 特例を使う取引には、帳簿に「3万円未満の鉄道料金」「自販機」などの旨を書く設定を会計ソフトや整備システムに入れる
  3. 中古車の買取は、販売用か社用車・代車かを仕入れの時点で区別する
  4. コインパーキングや給油のレシートを捨てずに保存する運用にする

よくある質問

インボイスが無くても帳簿だけで控除できる取引は何ですか?
国税庁Q&A問104で10区分です。3万円未満の公共交通機関、回収される入場券等、古物商・質屋・宅建業者・特定金属くず・再生資源の仕入れ、3万円未満の自動販売機・自動サービス機、ポストに出す切手払いの郵便、従業員の出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当です。
タクシー代は帳簿のみで控除できますか?
できません。タクシーは公共交通機関特例の対象外で、適格簡易請求書(領収書)を受け取って保存します。
コインパーキングの駐車場代はインボイスが要りますか?
要ります。コインパーキングは自動販売機特例の対象外で、精算機のレシート(適格簡易請求書)を保存します(国税庁Q&A問47)。少額特例の対象事業者なら、1万円未満は帳簿だけで控除できます。
帳簿のみ保存の特例では、帳簿に何を書けばよいですか?
通常の4項目に加えて、どの特例にあたるかを示す旨(例:3万円未満の鉄道料金、自販機)と、必要な場合は相手方の住所・所在地を書きます。
社用車として個人から買った中古車も帳簿のみで控除できますか?
古物商特例は販売用の棚卸資産に限られるため、社用車や代車として買う中古車には使えません。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月26日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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