納車や引取り、陸送、部品の仕入れで高速道路を使う整備工場・中古車販売店は多いはずです。ETCクレジットカードで払った通行料について、カード会社の利用明細はインボイスにあたりません。原則は、高速道路会社のETC利用照会サービスから料金確定後の利用証明書をダウンロードして保存します。ただし回数が多い場合は、カード明細と、道路会社ごとに1件の利用証明書を保存する方法が認められていて、15か月以内に同じ会社の道路を繰り返し使っていればダウンロードも要りません。国税庁インボイスQ&A問103と、NEXCO各社・阪神高速の案内をもとに整理します。
ETCカードの利用明細はインボイスか
クレジットカード会社が出す利用明細書は、一般的にインボイス(適格請求書)にあたりません。インボイスは売手(高速道路会社)が出す書類で、カード会社の明細は売手が作るものではなく、記載事項も満たさないためです(国税庁Q&A問103)。ETCクレジットカードで払った通行料は、高速道路会社のETC利用照会サービスから、通行料金が確定した後に利用証明書(適格簡易請求書の記載事項にあたる電子データ)をダウンロードして保存するのが原則です。NEXCO各社の案内では、料金確定後の利用証明書には「確」の表示があります。
次のものはインボイスとして扱われません。経理の担当者が「ETCの紙があるから大丈夫」と思いやすい点です。
- 料金所で受け取る利用証明書(ETCクレジットカードの場合)
- 料金が確定する前に利用照会サービスで出した利用証明書
- ETC利用履歴発行プリンターで印字した紙
- クレジットカード会社の利用明細書・利用明細データ
ETCクレジットカード分は利用明細+会社ごとに1件の利用証明書でよい
利用回数が多く、すべての利用証明書を保存するのが難しい場合は、クレジットカードの利用明細書(1回ごとの利用内容がわかるもの)と、高速道路会社ごとに任意の1取引分の利用証明書を合わせて保存すればよいとされています(国税庁Q&A問103)。この1件の利用証明書は毎月取る必要はなく、高速道路会社が登録をやめないかぎり、会社ごとに1回だけ取得すれば足ります。さらに、ETC利用照会サービスでダウンロードできる期間(15か月間)の中で同じ会社の道路を繰り返し使っていれば、いつでもダウンロードできる状態なので、ダウンロードしなくてもよいとされています(問103の注2)。
NEXCO東日本の道路からNEXCO中日本の道路を通って降りた場合など、複数の会社をまたぐときは、まとめて利用証明書を出す会社(降りた料金所の会社)の分を保存します(問103の注1)。関西国際空港連絡橋の空港連絡橋利用税のように、消費税の課税対象でない金額は控除できません。
| 払い方 | インボイスになる書類 |
|---|---|
| 現金(料金所) | 料金所の領収書(適格簡易請求書) |
| ETCではないクレジットカードを料金所で渡す | 料金所の利用証明書(適格簡易請求書) |
| ETCクレジットカード | ETC利用照会サービスの確定後の利用証明書。回数が多ければ、カード明細+会社ごとに1件の利用証明書 |
| ETCコーポレートカード | 月1回の後納料金等請求書+ETCコーポレートカード総括表(契約者単位) |
ETCコーポレートカードのインボイス(請求書と総括表)
高速道路会社が発行するETCコーポレートカード(大口・多頻度割引)は、ETCクレジットカードとは扱いが違います。NEXCO東日本の案内では、毎月1回郵送またはWebで届く後納料金等請求書とETCコーポレートカード総括表(契約者単位)の組み合わせが適格請求書です。登録番号と宛名は請求書に、年月日・内容・税率ごとの金額・消費税額は総括表の「当月利用分に係る請求額」に書かれています。カード単位の総括表の税額は参考値で、ETC利用照会サービスで見られるコーポレートカードの利用証明書はインボイスに対応していません(割引が反映されず料金が確定していないため)。
調整額がマイナスになる月の書類は、返還インボイス(適格返還請求書)にあたるとされています。返品・値引きの書類の考え方は返還インボイスの書き方で解説しています。ETCパーソナルカードは請求書が郵送またはWebで届きますが、どの書類がどの記載事項を満たすかの詳細は各社の案内で確認してください。
高速道路代は公共交通機関特例の対象外
電車や路線バスの3万円未満の運賃は、インボイスが無くても帳簿だけで控除できる公共交通機関特例の対象ですが、高速道路の通行料は対象外です。公共交通機関特例は船舶・路線バス・鉄道・軌道による旅客の運送に限られ、高速道路の通行は旅客の運送ではないためです(消費税法施行令70条の9第2項1号、国税庁Q&A問42)。帳簿だけで控除できる取引の一覧は帳簿のみ保存の特例一覧にまとめています。
一方、基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、2029年9月30日までの税込1万円未満の仕入れを帳簿だけで控除できる少額特例が使えます。高速道路の通行料1回が1万円未満なら、この特例の一般ルールにより帳簿だけで控除できます。Q&A問103はETCについて少額特例に触れていないため、規模の大きい事業者は利用証明書の保存を前提にします。
納車・陸送の高速代をお客様に請求するとき
納車や引取りの高速代をお客様に実費で請求する場面では、整備工場が高速道路会社に払った通行料を立て替えたのか、整備工場の陸送サービスの代金の一部なのかで処理が分かれます。
- 陸送・納車の代金の一部として請求する:整備工場の課税売上げ。工賃と同じく10%の対象として、自社の適格請求書に載せる。整備工場は自分が払った通行料を仕入れとして控除する(利用証明書などの保存が必要)
- 立替金として請求する:お客様が仕入税額控除を受けるには、高速道路会社の利用証明書(インボイス)と立替金精算書が要る(国税庁Q&A問94)
実費の高速代は、ETCの利用証明書をお客様ごとに分けて渡すのが手間になりやすいため、陸送・納車の料金に含めて自社の請求書に載せる形のほうが事務はまとまります。立替金の考え方は立替金とインボイス(車検の法定費用)で解説しています。
整備工場・車販店が今やること
- 社用車のETCカードが、ETCクレジットカードかコーポレートカードかを確かめる
- ETCクレジットカードは、利用照会サービスに登録し、使う高速道路会社ごとに確定後の利用証明書を1件ずつ保存する
- コーポレートカードは、後納料金等請求書と契約者単位の総括表を保存する
- 納車・陸送の高速代をお客様に請求するときの扱い(売上げか立替金か)を決めておく
よくある質問
- ETCカードの利用明細はインボイスになりますか?
- なりません。クレジットカード会社の利用明細は売手(高速道路会社)が出す書類ではないためです。原則はETC利用照会サービスから料金確定後の利用証明書をダウンロードして保存します(国税庁Q&A問103)。
- ETCの利用証明書は毎回ダウンロードしないといけませんか?
- 回数が多い場合は、カードの利用明細と、高速道路会社ごとに任意の1件の利用証明書を保存すれば足ります。1件の利用証明書は会社ごとに1回取ればよく、15か月以内に同じ会社の道路を繰り返し使っていればダウンロード自体も不要です。
- 料金所で受け取った利用証明書はインボイスですか?
- ETCクレジットカードの場合はインボイスとして扱われません。ETC利用履歴発行プリンターの紙も同じです。現金で払ったときの料金所の領収書は適格簡易請求書です。
- 高速道路代は公共交通機関特例で帳簿だけでよいですか?
- いいえ。公共交通機関特例は船・路線バス・鉄道・モノレールなどに限られ、高速道路の通行料は対象外です。少額特例の対象事業者なら、1回1万円未満の通行料は帳簿だけで控除できます。
- ETCコーポレートカードのインボイスは何ですか?
- 月1回届く後納料金等請求書と、ETCコーポレートカード総括表(契約者単位)の組み合わせです。利用照会サービスで見られるコーポレートカードの利用証明書はインボイスに対応していません。
出典・参考資料
- 国税庁 インボイスQ&A 問42・問94・問103・問111(令和8年5月改訂版・全体PDF)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf - NEXCO東日本 高速道路のご利用にかかる適格請求書等保存方式(インボイス制度)について
https://www.driveplaza.com/cms/box_side_news/2023/0915/etc_Invoice-system_start.html - NEXCO東日本 よくあるご質問 大口・多頻度割引における請求書等へのインボイス制度対応
https://www.driveplaza.com/assets/pdf/etc/dis/etc_dis_frequency/faq.pdf - NEXCO中日本 インボイス制度開始に伴う高速道路料金の領収書等について
https://dc.c-nexco.co.jp/etc/discount/frequency/invoice_system.html - 阪神高速道路 インボイス制度開始に伴う高速道路のご利用について
https://www.hanshin-exp.co.jp/drivers/ryoukin/oshirase/invoice.html
記載内容は2026年10月26日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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