車検の請求書には、工賃や部品代のほかに自賠責保険料、自動車重量税、国の検査登録手数料といった法定費用が並びます。インボイス制度のもとでこれらをどう書くかは、整備工場からの質問が特に多いところです。先に答えを書くと、法定費用はお客様が本来納めるものを工場が預かって払う性質のもので、10%の課税売上げとは分けて書くのが基本です。ただし、国税庁のインボイスQ&A(令和8年(2026年)5月改訂版)には、自動車整備の法定費用そのものを扱った問は見当たりません。この記事では、立替金の一般ルール(問94)と、消費税法基本通達、Q&Aの類例から、どこまでが国の資料に書かれていて、どこからが当てはめなのかを分けて説明します。
立替金とインボイスの基本ルール(国税庁Q&A 問94)
インボイス制度での立替金の扱いは、国税庁インボイスQ&A 問94(令和8年5月改訂版)にまとまっています。場面は、取引先B社が自社の経費をC社に立て替えて払い、自社がB社に精算するケースです。
問94はまず、C社がB社宛に出した適格請求書を自社がそのまま受け取っても、それだけでは「C社から自社に交付された適格請求書」にはならない、と述べています。そのうえで、B社から立替金精算書等の交付を受けるなどして、C社からの課税仕入れが自社のものだと明らかになっていれば、C社の適格請求書と立替金精算書等を保存することで保存要件を満たす、としています(基通11-6-2)。
立替をした側が免税事業者でもよい
問94は「立替払を行うB社が適格請求書発行事業者以外の事業者であっても、C社が適格請求書発行事業者であれば、仕入税額控除を行うことができます」と明記しています。控除の可否を決めるのは、立て替えた人ではなく、実際の支払先が登録事業者かどうかです。
| 要件(問94の整理) | 中身 | 整備工場での場面の例 |
|---|---|---|
| 1. 支払先が登録事業者 | 実際の支払先(C社)が適格請求書発行事業者であること | 工場が顧客の代わりに払った先が登録しているか |
| 2. 書類の組み合わせ | C社の適格請求書(B社宛でよい)と、B社が作る立替金精算書等 | 支払先の領収書と、工場が出す精算書(請求書の立替欄) |
| 3. 帳簿の記載 | 帳簿に支払先(C社)の名称を書き、C社の名称と登録番号を確認できるようにしておく | お客様側の帳簿で、実際の支払先が分かるようにする |
複数の人の分をまとめて立て替えたため領収書のコピーを渡しにくいときは、立替金精算書の保存だけでよいとされています(問94の参考1)。その場合、立て替えた側は、立替金が仕入税額控除できるものか(支払先が登録事業者かどうか)を明らかにし、適用税率ごとに区分するなど、必要な事項を精算書に書かなければなりません。記載イメージには、立て替えた側の登録番号は記載不要とあります。支払先が登録事業者かどうかは、登録番号の確認方法の手順で公表サイトから確かめられます。
車検の法定費用の課否(自賠責、重量税、検査登録手数料)
立替金の話に入る前に、そもそも法定費用に消費税がかかるのかを確認しておきます。ここは消費税法と基本通達に根拠があり、インボイス制度が始まる前から変わっていません。
| 費目 | 消費税法上の区分 | 根拠 | 確度 |
|---|---|---|---|
| 自賠責保険料 | 保険料を対価とする役務の提供で非課税 | 消費税法別表第二第三号、基通6-3-1(4) | 条文で確認。整備工場が預かる場合の処理は国税庁の明記なし(当てはめ) |
| 自動車重量税 | お客様が本来納付すべきもので、それとして受け取ったことが明らかなら対価に含まれない | 基通10-1-4(注) | 通達の原文で確認 |
| 国の検査・登録手数料 | 法令に基づく国の事務の手数料で非課税。工場が預かる場合は基通10-1-4(注)の「手数料等」 | 消費税法別表第二第五号イ、基通10-1-4(注) | 条文で確認。自動車検査への当てはめは確度B |
| 自賠責の代理店手数料 | 保険代理店が受け取る手数料は課税 | 基通6-3-2 | 通達の原文で確認 |
基通10-1-4(注)の原文は、「課税資産の譲渡等を受ける者が本来納付すべきものとされている登録免許税、自動車重量税、自動車取得税及び手数料等(中略)について登録免許税等として受け取ったことが明らかな場合は、課税資産の譲渡等の金額に含まれない」です。同じ通達の本文は、事業者自身が本来納めるべき印紙税や手数料は対価から差し引けない、としています。つまり、お客様が納めるものとして明らかに区分して預かることが、課税標準から外れる条件です。
自動車重量税が「税金だから消費税の対象外」と直接書いた国税庁の文書は、今回の確認では見つかりませんでした。実務上は上の基通10-1-4(注)で処理するものと整理しています。車検の印紙代が何に充てられているかの内訳は、姉妹サイトの車検の印紙代の内訳で説明しています。
自動車リサイクル料金(預託金)の扱いは、この記事が根拠にした国税庁の資料では確認できていません(未確認)。請求書にどう載せるかは、顧問税理士に確認してください。
車検の請求書での法定費用の区分(入湯税の問58-2からの当てはめ)
国税庁インボイスQ&Aを「自賠責」「重量税」「車検」「整備」で全文検索しても、該当する問はありませんでした。整備の請求書に法定費用をどう書くかを、国税庁が直接示した資料は今のところ無いということです。
いちばん近い類例が、旅館の入湯税を扱った問58-2(令和8年5月改訂版)です。問58-2は、課税対象外の取引に適格請求書等の交付義務は無いが、適格請求書等に併せて記載してもよいとし、その場合は「受け取った対価のうち課税対象外のものを除いた税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額を内訳欄に記載してください」と述べています。
これを車検に当てはめると(当てはめ・確度B)、次のような書き方になります。
- 工賃と部品代は「10%対象」として合計し、その合計から消費税額を出す
- 自賠責保険料、自動車重量税、検査登録手数料は「非課税・不課税(立替金)」などの欄にまとめ、10%対象の合計にも消費税額にも入れない
- 請求書の総額は両方を足した金額にしてよいが、税率ごとの合計と消費税額は課税分だけで書く
国税庁の類例と通達から当てはめた形で、整備業向けに明記されたルールではありません。とはいえ、法定費用を10%対象に混ぜてしまうと、売上げの消費税を多く納めることになり、お客様の側でも仕入税額控除の額がずれます。少なくとも混ぜない形にしておくのが安全です。請求書の様式そのもの(6項目の記載事項の並べ方)は、姉妹サイトの整備・車検の請求書テンプレートに記載例があります。
なお、Q&A 問23の(注)2は「免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行った場合については、適格請求書の交付義務は課されません」としています。法定費用だけを精算する書類には適格請求書の交付義務はかからない、という読み方になります。
法人のお客様に立替金精算書が必要になる場面
個人のお客様の車検では、仕入税額控除を気にする必要はほとんどありません。問題になるのは、運送会社、営業車を持つ法人、リース会社など、課税事業者のお客様です。
自賠責保険料と検査登録手数料は非課税、自動車重量税は税そのものなので、お客様の側でも仕入税額控除の対象になりません。したがって、法定費用の部分について問94の立替金精算書の要件を厳密に満たす必要が出るのは、立て替えたものの中に課税仕入れが含まれる場合です。たとえば、お客様の依頼で工場が代わりに払った駐車場代や部品の送料などが混ざると、その部分は問94の流れで、支払先の適格請求書と精算書をそろえることになります。
課税・非課税が混ざる立替金精算書では、問94の参考1にあるとおり、税率ごとに区分し、支払先が登録事業者かどうかを分かるようにしておきます。端数処理の考え方はインボイスの端数処理で、複数社分の立替金精算書は税率ごとにまとめて1回端数処理してよいとされている点(問57の参考③)を含めて説明しています。
整備工場・車販店が今やること
- 車検見積書と請求書で、法定費用の欄が10%対象の合計に入っていないかを確認する
- 法定費用の欄に「非課税・不課税」「立替金」などの見出しを付け、課税分と分けて合計を出す
- 自賠責の代理店手数料や車検代行料など、工場自身が受け取る手数料は課税売上げとして10%対象に入れる
- 法人のお客様から立替金精算書を求められたら、支払先と税区分が分かる形で出せるかを確かめる
- 免税事業者の協力工場や外注先に払う分は、免税事業者からの仕入れの経過措置の対象になるかも合わせて確認する
請求書の区分は、毎回手で直すより整備システム側の設定で固定したほうが間違いが減ります。お使いの整備システム・整備ソフトで、法定費用を課税対象外の欄に分けて出せるか、税率ごとの合計と消費税額が課税分だけで計算されるかを一度確認してください。日本カーネットでも、整備システム・整備ソフト DREAM POWER を含めて請求書の区分の無料相談を受け付けています。制度全体の流れはインボイス制度の改正点にまとめています。
よくある質問
- 車検の法定費用にインボイス(適格請求書)は必要ですか?
- 自賠責保険料と国の検査登録手数料は非課税、自動車重量税はお客様が本来納める税で、いずれも工場の課税売上げではありません。Q&A 問23(注)2は、非課税・不課税の取引だけなら適格請求書の交付義務は課されないとしています。
- 法定費用を工賃と同じ請求書に書いてもよいですか?
- 併記してかまいません。入湯税を扱った問58-2(令和8年5月改訂版)の類例からの当てはめですが、10%対象の合計と消費税額には法定費用を入れず、課税対象外として分けて書く形が安全です。
- 立替金で仕入税額控除を受けるには何が必要ですか?
- 問94によると、実際の支払先が適格請求書発行事業者であること、支払先の適格請求書と立替金精算書等を保存すること、帳簿に支払先の名称を書くことが必要です。立て替えた側が免税事業者でもかまいません。
- 自賠責保険の代理店手数料はどう扱いますか?
- 基通6-3-2は、保険代理店が受け取る代理店手数料は課税資産の譲渡等の対価に当たるとしています。保険料そのものは非課税ですが、工場が受け取る手数料は課税売上げです。
- 自動車リサイクル料金はどう書けばよいですか?
- この記事が根拠にした国税庁の資料では確認できていません。請求書での扱いは顧問税理士か所轄の税務署に確認してください。
出典・参考資料
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂版)問23・問57・問58-2・問94
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf - 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 一覧
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_01.htm - 国税庁 消費税法基本通達 第10章第1節(10-1-4 委託販売等以外の対価の額)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/10/01.htm - 国税庁 消費税法基本通達 第6章第3節(6-3-1 保険料、6-3-2 保険代理店報酬)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/06/03.htm - 国税庁 タックスアンサー No.7192 自動車重量税のあらまし
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7192.htm - e-Gov法令検索 消費税法(別表第二)
https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
記載内容は2026年10月6日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
インボイス対応の整備システムを相談する
2026年10月からの控除割合70%への切り替えのように、制度の改正は続きます。いま使っている整備システム・整備ソフトで適格請求書や経過措置の帳簿記載に対応できるか、日本カーネットの担当者が無料でご相談に応じます。
お電話:03-5256-7877平日 9:00〜12:00・13:00〜18:00







