インボイス(適格請求書)に書く消費税額に1円未満の端数が出たときは、一の適格請求書につき、税率ごとに1回だけ端数処理をします。切上げ、切捨て、四捨五入のどれを選ぶかは自由ですが、明細行ごとに消費税を計算して端数を処理し、それを足し合わせる方法は認められていません。整備工場の請求書は、工賃や部品のように10%がかかるものと、自賠責保険料のような法定費用が同じ紙に並ぶので、どこに端数処理をかけるかを間違えやすい書類です。国税庁インボイスQ&A 問57(令和8年(2026年)5月改訂版)と消費税法施行令70条の10をもとに、計算例で確認します。
インボイスの端数処理のルール(問57・消令70の10)
国税庁インボイスQ&A 問57は、端数処理について次のように述べています。
国税庁インボイスQ&A 問57(令和8年5月改訂版)
「適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(消令70の10、基通1-8-15)。」
あわせて、切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法は任意に選べるとしています。
同じ問の(注)は、「一の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することは認められません」としています。記載例の注記も「消費税額等の端数処理は、適格請求書単位で、税率ごとに1回行います」「商品ごとの端数処理は認められません」です。
計算の元になる式は、消費税法施行令70条の10に書かれています。税抜価額を税率ごとに合計して10%(軽減税率は8%)を掛ける方法か、税込価額を税率ごとに合計して110分の10(軽減税率は108分の8)を掛ける方法のどちらかで出し、1円未満の端数が出たら処理します。
| 項目 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 端数処理の回数 | 一の適格請求書につき、税率ごとに1回行う | 問57、消令70の10、基通1-8-15 |
| 端数処理の方法 | 切上げ、切捨て、四捨五入などから任意に選べる | 問57 |
| 明細行ごとの端数処理の合計 | 認められない | 問57の(注) |
| 計算式(税抜) | 税率ごとの税抜合計 × 10/100(軽減は8/100) | 消令70の10一 |
| 計算式(税込) | 税率ごとの税込合計 × 10/110(軽減は8/108) | 消令70の10二 |
| 適格簡易請求書 | 消費税額を書く場合は同じ扱いになる | 問59 |
整備請求書の端数処理の計算例(法定費用が混ざる場合)
車検の請求書を例に計算します。次の金額は説明のための仮の数字で、実際の工賃や法定費用の額ではありません。
- 10%対象:24か月点検整備料30,000円、エンジンオイル3,985円、ワイパーゴム1,575円、エアフィルター2,345円が並びます(いずれも税抜)
- 非課税・不課税(立替):自賠責保険料20,000円、自動車重量税16,000円、検査登録手数料2,000円を預かります
正しい計算(10%対象の合計に1回だけ端数処理)
10%対象の税抜合計は、30,000円+3,985円+1,575円+2,345円=37,905円です。これに10%を掛けると3,790.5円で、0.5円の端数が出ます。
切捨てを選べば消費税額は3,790円になり、四捨五入か切上げを選べば3,791円になります。どれを選んでもかまいませんが、どの方法でも端数処理は37,905円の合計に対して1回だけです。
切捨てを選んだ場合、10%対象の合計は37,905円、消費税3,790円、課税分の税込計は41,695円になります。法定費用38,000円は非課税・不課税の欄にまとめ、10%対象の合計にも消費税額にも入れません。請求総額は41,695円+38,000円=79,695円です。法定費用を分けて書く理由は、立替金と車検の法定費用で説明しています。
認められない計算(明細行ごとの端数処理)
明細行ごとに10%を掛けると、3,000円、398.5円、157.5円、234.5円になります。行ごとに切り捨てて足すと3,789円、行ごとに四捨五入して足すと3,792円です。どちらも、正しい計算(3,790円または3,791円)と1円から2円ずれます。問57の(注)が認めないとしているのは、この行ごとの計算です。
やってはいけない計算(法定費用まで10%対象に入れる)
法定費用を含めた75,905円に10%を掛けると7,590.5円になり、切捨てで7,590円となり、消費税額が3,800円多く出ます。端数処理の問題というより区分の誤りですが、請求書の合計欄を1本にしている書式で起きやすいので、あわせて確認してください。
税込価額で計算する場合
店頭価格を税込で決めている場合は、税込合計に110分の10を掛けます。たとえば10%対象の税込価額が33,000円、4,383円、1,732円、2,579円(仮の数字)なら、合計41,694円×10/110=3,790.36…円で、切捨てなら3,790円です。この場合も端数処理は合計に1回で、行ごとの税額を足し上げることはしません。
端数処理でよくある誤りと例外
整備や車販の書類で、端数処理に関して取り違えやすい点を並べます。
| 場面 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 10%と8%の商品が同じ請求書にある | 10%の合計と8%の合計に、それぞれ1回ずつ端数処理する | 問57 |
| 1か月分の取引をまとめた請求書 | その請求書を一の適格請求書として、税率ごとに1回処理する | 問57の記載例 |
| 複数社の支払先をまとめた立替金精算書 | 支払先ごとに区分するほか、税率ごとにまとめて1回端数処理することも可能 | 問57の参考③ |
| 自社分と他社分を代理交付で1枚にする | 自社分と他社分をまとめて端数処理できず、それぞれ税率ごとに処理 | 問57の参考② |
| レシート(適格簡易請求書)に消費税額を書く | 適格請求書と同じく、税率ごとに1回 | 問59 |
消費税額を誤って記載したときの修正
端数処理の誤りで消費税額がずれた請求書を出してしまったときは、そのままにせず、修正したインボイスを出し直します。国税庁インボイスQ&A 問32(令和8年5月改訂版)は、交付した適格請求書の記載事項に誤りがあったときは、買手である課税事業者に対して修正した適格請求書を交付しなければならないとしています(消法57の4④⑤)。買手が修正した仕入明細書を作り、売手の確認を受ける方法も認められています。
出し直し方について、問33は、誤りがあった事項を修正して改めて記載事項の全てを記載したものを交付する方法と、当初のものとの関連性を明らかにして修正した事項を明示したものを交付する方法を例に挙げています。整備システムで請求書を再発行するときは、元の請求書番号が分かる形にしておくと、お客様の経理担当者も照合しやすくなります。
待合室での飲料販売など、軽減税率(8%)の売上げがある工場では、10%と8%を別々に合計してそれぞれ1回ずつ処理します。8%の売上げがない工場では、10%対象の合計に1回だけと考えれば足ります。
端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)は任意ですが、取引先によって変えると、後から照合するときに説明が必要になります。社内で1つに決めて、整備システムと会計ソフトの設定をそろえておくと混乱しません。
整備システム・整備ソフトの設定で確認すること
端数処理は、請求書を出すソフトの設定で決まる部分が大きく、担当者が手で直すものではありません。インボイス制度が始まった令和5年(2023年)10月1日より前の設定のまま使っている場合は、計算単位を一度見直しておくと安心です。次の点を確認してください。
- 消費税の計算単位が、請求書単位(伝票単位)で税率ごとに1回になっているか(明細行ごとの計算になっていないか)
- 端数処理の方法(切捨て、四捨五入、切上げ)が社内で決めたものになっているか
- 自賠責保険料、重量税、検査登録手数料が非課税・不課税として扱われ、10%対象の合計と消費税額から外れているか
- 月締めの合算請求書を出す場合、合算後に税率ごとに1回の計算になっているか
- 店頭レシートと整備の請求書で、端数処理の方法がそろっているか
お使いの整備システム・整備ソフトで、上の設定を画面から確認できるか、1枚の請求書で試算して税額が合うかを見ておくと安心です。日本カーネットでは、整備システム・整備ソフト DREAM POWER の設定確認を含めてインボイス対応の無料相談を受け付けています。
整備工場・車販店が今やること
- 直近の車検請求書を1枚選び、10%対象の税抜合計×10%を手計算して、請求書の消費税額と合うかを確かめる
- 法定費用が10%対象の合計に混ざっていないかを確認する
- 端数処理の方法を社内で1つに決め、整備システムと会計ソフトの設定をそろえる
- 店頭レシートを適格簡易請求書として出しているなら、レシートの税額計算も税率ごとに1回か確認する
- 振込手数料を差し引かれた入金の処理は、振込手数料とインボイスの手順で統一する
制度全体の改正点はインボイス制度の改正点にまとめています。
よくある質問
- インボイスの消費税の端数処理は何回行いますか?
- 一の適格請求書につき、税率ごとに1回です(問57、消令70の10)。10%と8%の取引が混ざっていれば、それぞれの合計に1回ずつ行います。
- 端数は切り捨てでないといけませんか?
- いいえ。問57は、切上げ、切捨て、四捨五入などの方法は任意としています。社内で決めた方法で統一しておくと照合が楽になります。
- 明細行ごとに消費税を計算して合計してもよいですか?
- 認められません。問57の(注)は、個々の商品ごとに消費税額等を計算して端数処理し、その合計を記載することは認められないとしています。
- 車検の法定費用は端数処理の計算に入れますか?
- 自賠責保険料や重量税、検査登録手数料は10%の課税売上げではないので、10%対象の合計にも消費税額の計算にも入れません。非課税・不課税の欄に分けて書くのが安全です。
- レシート(適格簡易請求書)の端数処理も同じですか?
- 同じです。問59は、適格簡易請求書に消費税額を記載する場合も、税率ごとに1回の端数処理をするとしています。
出典・参考資料
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年5月改訂版)問32・問33・問57・問59
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf - 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 一覧
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_01.htm - 国税庁 インボイス制度特設サイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm - e-Gov法令検索 消費税法施行令(第70条の10)
https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360 - e-Gov法令検索 消費税法(第57条の4)
https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
記載内容は2026年10月6日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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