個人から車を買うときの消費税とインボイス|下取り・社用車・古物商特例

一般の個人(消費者)はインボイスを出さないため、個人から車を買ったときに消費税をどれだけ控除できるかは、誰が・何のために買うかで変わります。中古車販売店が販売用に買い取るなら古物商特例で全額を控除でき、社用車や代車として買うなら経過措置で2026年10月1日以後は70%の控除です。古物商ではない一般の会社が社員から車を買う場合も、経過措置は使えます。国税庁インボイスQ&A(令和8年5月改訂版)の問106・問106-2・問110・問113をもとに、場面ごとに整理します。

個人から車を買うときの消費税(場面別の早見表)

買う人・目的使える仕組み控除できる割合残すもの
中古車販売店(古物商)が販売用に買取・下取り古物商特例全額古物台帳+特例の旨を書いた帳簿
中古車販売店が社用車・代車として買う経過措置2026年9月30日まで80%、10月1日以後70%区分記載請求書等と同じ事項の書類+帳簿
古物商ではない会社が社員・個人から買う経過措置同上同上
相手が登録事業者で、事業として売る通常の仕入税額控除全額適格請求書

割合は課税仕入れの時期で決まり、車の購入は原則として引渡しの日で判定します(国税庁Q&A問113-3)。2026年9月30日までに引渡しを受けた車は80%、10月1日以後は70%です。控除額は経過措置の計算ツールで確かめられます。

中古車販売店が個人から買い取る・下取りするとき(古物商特例)

古物営業法の許可を受けた古物商が、登録事業者でない者(消費者・免税事業者・未登録の事業者)から販売用の中古車を買い受けたときは、帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます(消費税法施行令49条1項1号ハ、国税庁Q&A問106)。Q&A問106の設例そのものが「中古車販売業(古物商)を営み、事業者及び消費者から中古車の仕入れを行っている」会社です。この特例は経過措置とは別物で、80%や70%に減らされず全額を控除できます。お客様から税込110万円で下取りした車なら、10万円をそのまま控除します。

要件は、①古物商の許可がある、②相手が登録事業者以外、③買うものが古物(準古物を含む)、④販売用の棚卸資産として買う、の4つです。登録している個人事業者が私物の車を売る場合のように、消費者の立場で売るなら登録事業者以外の者として扱えます。相手が登録事業者かを確かめて返事がなければ、登録事業者以外の者として扱ってよいとされています(問106-2の注2)。

帳簿には、相手方の氏名と住所、年月日、内容、金額に加えて「古物商特例」のように特例にあたる旨を書きます。古物営業法では税込1万円以上の買い取りは古物台帳に相手の住所・氏名・職業・年齢などを書くため、古物台帳と、特例の旨を書いた総勘定元帳などを合わせて保存すれば要件を満たします(問110)。古物台帳も帳簿と同じく7年間保存します。詳しくは古物商特例とインボイスで解説しています。

社用車・代車として個人から買うとき(経過措置)

古物商特例は販売用の棚卸資産に限られるため、中古車販売店でも、社用車や代車として自社で使う車を個人から買う場合は対象外です。この場合は、免税事業者等からの仕入れの経過措置を使います。経過措置の対象は「消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者」からの課税仕入れで(国税庁Q&A問113)、個人(消費者)から買う車も含まれます。2026年10月1日以後に引渡しを受けた税込110万円の車なら、仕入税額相当額10万円の70%、7万円を控除できます。Q&A問106-2の表でも、古物商以外の仕入れは「80%控除・7・5・3割控除」の側に分類されています。

経過措置を受けるには、帳簿に通常の事項に加えて経過措置の適用を受ける旨(国税庁の例示は「80%控除対象」「免」など)を書き、区分記載請求書等と同じ事項(作成者の氏名、年月日、内容、税込金額、受け取る事業者の名称)が書かれた書類を保存します。個人から車を買う場面で、売主が作る領収書・売買契約書と、買う側が作って売主の確認を受けた仕入明細書のどれを保存するかを国税庁が名指しで示した資料はないため、売買契約書に必要な事項がそろっているかを確かめておきます。帳簿の書き方は経過措置の帳簿の記載方法で整理しています。

古物商ではない会社が社員や個人から車を買うとき

整備工場でも古物商の許可を持っていない会社や、一般の法人が社員の車を社用車として買い取る場合は、古物商特例は使えません。ただし、経過措置は消費者からの仕入れも対象なので、前の節と同じく2026年10月1日以後なら70%を控除できます。「個人から買った車は、古物商でなければ一切控除できない」という説明は誤りです。

経過措置には、1つの相手からの対象の仕入れが年(事業年度)で税込1億円を超えると、超えた部分に使えないという上限があります(令和8年10月1日以後に始まる課税期間から。それより前は10億円)。令和8年度改正で上限の条文の主語が「一の事業者」から「一の者」に変わっていて、消費者からの仕入れも相手ごとに合算すると読めますが、この点を国税庁が説明した資料は確認できていません。車1台ごとの金額で上限に届く場面は多くないはずです。

相手が登録事業者だった場合と、法人の社用車の下取り

相手が登録事業者で、事業として車を売る場合は、古物商でも一般の会社でも適格請求書の保存が必要です(問106)。法人のお客様の社用車を下取りする場合は、相手が登録事業者であることが多いため、下取りの精算書や売買契約書を適格請求書の形で受け取ります。適格請求書を受け取れなかった場合でも、登録番号のない請求書のように区分記載請求書等と同じ事項の書類があれば、経過措置は使えます(問113-2)。

自社で使っていた社用車や代車を売るときは、売る側として消費税の課税売上げになります。簡易課税の事業区分は第4種(みなし仕入率60%)です(基本通達13-2-9)。2割特例・簡易課税を含めた比較は2割特例・3割特例の比較計算ツールで確かめられます。

整備工場・車販店が今やること

  1. 個人から車を買うときは、販売用か、社用車・代車かを買う時点で記録します
  2. 販売用の買取りは、古物台帳と「古物商特例」の旨を書いた帳簿をそろえます
  3. 社用車・代車の購入は、売買契約書に区分記載請求書等の事項があるかを確かめ、帳簿に経過措置の旨を書きます
  4. 法人からの下取りは、相手の登録番号を確かめ、適格請求書の形の精算書を受け取ります

よくある質問

法人が個人から車を買うと消費税は控除できますか?
控除できます。古物商が販売用に買うなら古物商特例で全額、それ以外(社用車・代車、古物商でない会社)なら経過措置で、2026年10月1日以後の引渡し分は70%を控除できます(国税庁Q&A問106・問113)。
お客様から下取りした中古車の消費税は全額控除できますか?
中古車販売店(古物商)が販売用に下取りしたなら、古物商特例で全額を控除できます。帳簿に特例の旨と相手の住所・氏名を書き、古物台帳と合わせて保存します。
個人から買った社用車にも古物商特例は使えますか?
使えません。古物商特例は販売用の棚卸資産に限られます。社用車や代車は経過措置の対象で、2026年10月1日以後は70%です。
80%と70%のどちらになるかは何で決まりますか?
車の引渡しを受けた日で決まります。2026年9月30日までの引渡しは80%、10月1日以後は70%です(国税庁Q&A問113-3)。
売主が登録している個人事業者だったらどうなりますか?
事業として車を売るなら適格請求書の保存が必要です。私物の車を消費者の立場で売る場合は、登録事業者以外の者として扱えます(問106-2の注2)。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月26日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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