返還インボイスとは|部品の返品・値引き・リベートの書き方と1万円未満の免除

返還インボイス(適格返還請求書)は、返品を受けたときや値引き・リベートを払ったときに、インボイスの登録事業者である売手が買手に渡す書類です。整備工場が部品商に部品を返品したなら部品商が出し、整備工場がお客様に値引きしたなら整備工場が出します。記載事項は5つで、適格請求書と違って宛名は要りません。税込1万円未満なら交付しなくてよく、この免除は振込手数料だけでなく返品・値引き・リベートにも及びます。国税庁インボイスQ&A(令和8年5月改訂版)の問27・問28・問60〜問63をもとに、自動車業界の取引で迷いやすい点を整理します。

返還インボイス(適格返還請求書)とは

返還インボイスとは、インボイスの登録事業者が返品・値引き・割戻し(リベート)など「売上げに係る対価の返還等」を行ったときに、相手方に交付しなければならない書類です(消費税法57条の4第3項、国税庁Q&A問27)。売上げのときに出す適格請求書の「マイナス版」にあたり、買手はこの書類を見て仕入税額を減らします。たとえば部品商が整備工場に税込33,000円のブレーキパッドを納め、そのうち11,000円分が返品されたなら、部品商は11,000円分の返還インボイスを整備工場に渡します。登録をやめたあとでも、登録していた期間の売上げの返品なら交付の義務があります(基本通達1-8-19)。

返還インボイスの対象になる「対価の返還等」には、次のようなものがあります。売上げの代金を返す・減らす取引かどうか、その中身で判断します。

  • 返品:納めた部品・用品が戻ってきて、代金を返すか売掛金を減らします
  • 値引き:傷や納期遅れなどを理由に、あとから代金を下げます
  • 割戻し・販売奨励金(リベート):販売数量や販売高に応じて、取引先に金銭で払うものです(基本通達14-1-2)
  • 売上割引:支払期日より前に代金を受け取ったことを理由に割り引くものです(基本通達14-1-4)
  • 売手が負担する振込手数料を値引きとして処理する場合(振込手数料とインボイスで詳しく解説)

返還インボイスの記載事項(5項目・宛名は不要)

返還インボイスに書く事項は、消費税法57条の4第3項で次の5つと決まっています(国税庁Q&A問60)。

記載事項書き方の例(部品の返品)
①登録事業者の氏名または名称と登録番号株式会社○○部品 T1234567890123
②対価の返還等を行う年月日と、もとの売上げの年月日返品日 2026年10月20日/納品 2026年10月分
③もとの売上げの資産・役務の内容ブレーキパッド(返品)
④返還等の金額(税抜または税込)を税率ごとに合計した額10%対象 11,000円(税込)
⑤返還等の金額に係る消費税額等、または適用税率消費税額 1,000円、または「10%」

返還インボイスには、適格請求書の6項目目にあたる「交付を受ける事業者の氏名または名称(宛名)」がありません。また⑤は消費税額と適用税率のどちらか一方でよく、両方書いてもかまいません(国税庁Q&A問60の記載例)。もとの売上げの年月日は「10月分」のような月単位でもよく、返品を合理的な方法で継続して処理しているなら「前月末日」や「最終販売年月日」を書く方法も認められています(問61)。整備システムや販売管理ソフトで返品伝票を出すときは、登録番号と税率ごとの金額が印字されるかを確かめておくと、別の書類を作る手間がなくなります。

返還インボイスの1万円未満の交付免除と判定の単位

返品・値引き・リベートの金額が税込1万円未満なら、返還インボイスの交付義務は免除されます(消費税法施行令70条の9第3項2号、国税庁Q&A問28)。この免除は振込手数料に限らず、対価の返還等の全般が対象です。判定は商品ごとでも税率ごとでもなく、返金した金額、または値引きの対象になった請求・債権の単位ごとに減らした金額で行います(基本通達1-8-17)。Q&A問28の例では、1商品100円のリベートが200個分で合計2万円になる場合、1万円以上なので免除になりません。

1万円未満の免除は、買手側の少額特例とは別の制度です。少額特例は、基準期間の課税売上高1億円以下などの事業者が2029年9月30日までに行う1万円未満の仕入れを帳簿だけで控除できる経過措置で、返還インボイスの免除は売手の交付義務の話です。返還インボイスの免除には期限も事業規模の条件もありません。

場面金額返還インボイス
部品1点を返品(返金)税込4,400円不要(1万円未満)
請求50万円から振込手数料440円を引かれ、値引きとして処理440円不要(1万円未満)
月間の取引量に応じたリベート(1個100円×200個)20,000円必要(合計で判定)
10%と8%の商品をまとめて値引き(10%分6,000円・8%分5,000円)11,000円必要(税率ごとに分けて判定しない)

請求書と返還インボイスを1枚で兼ねる差額記載

同じ相手に適格請求書と返還インボイスを渡すなら、それぞれの記載事項を満たしていれば1枚の書類で交付できます(基本通達1-8-20、国税庁Q&A問62)。さらに継続して同じ方法をとることを条件に、売上げの金額から返品・値引きの金額を差し引いた差額と、その差額から計算した消費税額を税率ごとに書けば、両方の記載事項を満たしたものとして扱われます。この場合の端数処理は税率ごとに1回です(問62の注)。部品商の月締め請求書で「当月の納品額−前月分の返品」を相殺している形は、この考え方で処理できると読めます。

Q&A問62は、卸売業者が当月の請求額から前月分の販売奨励金を差し引いて請求する例を挙げています。部品商や整備工場を名指しした国税庁の説明はないため、相殺の形で請求書を作っている場合は、差額記載の要件(継続適用、税率ごとの差額と税額)を満たしているかを顧問税理士と確かめてください。端数処理のルールはインボイスの端数処理で解説しています。

販売奨励金・リベートの返還インボイスは誰が出すか

部品商が取引量に応じて整備工場にリベートを払う場合、リベートは部品商の売上げの対価の返還等にあたるため、返還インボイスを出すのは払う側の部品商です(基本通達14-1-2、国税庁Q&A問63)。整備工場が「リベート請求書」を自社の適格請求書として出す処理は、この整理とは合いません。

ただし、受け取る側(整備工場)が「奨励金請求書」を作る運用なら、その書類に返還インボイスの記載事項(払う側の部品商の名称・登録番号など)が書かれていれば、部品商は別に返還インボイスを交付しなくてよいとされています(問63)。メーカーや部品商から「協力金」の名目で受け取るお金が対価の返還等にあたるかは、国税庁の名指しの解説がありません。販売数量や販売高に応じた金銭なら販売奨励金に近く、広告への協力など役務の対価なら受け取る側の課税売上げになり得るため、名目より中身で判断します。

返品を受けた側(買手)の処理と前の期の返品

返品をした整備工場や値引きを受けた側は、対価の返還を受けた課税期間に仕入れの税額を減らします(消費税法32条1項)。売手の側は、返還等をした日の課税期間に売上げの税額から差し引きます(消費税法38条1項)。前の課税期間の売上げにさかのぼって直す仕組みではありません。

  • 前の期の売上げの返品でも、返還インボイスの交付義務の例外にはなりません(例外は1万円未満などと、登録前の売上げ)。もとの売上げの年月日は「○月分」と書けます
  • 登録する前の売上げを登録後に値引き・返品した場合は、売上げの税額からの控除は使えますが、返還インボイスの交付義務はありません(基本通達1-8-18)
  • 交付した返還インボイスに誤りがあれば、修正したものを交付する義務があります(問32)

整備工場・車販店が今やること

  1. 返品・値引き・リベートの伝票が、返還インボイスの5項目(登録番号、年月日、内容、税率ごとの金額、税額または税率)を満たすか確かめます
  2. 月締めで相殺している請求書は、差額記載として毎月同じ形で出しているかを見ます
  3. 1万円未満の免除を使う場面と、合計が1万円以上になるリベートを分けて運用する
  4. 部品商から受け取るリベート・協力金の名目と中身を確認し、どちらが書類を出すかを取り決める

よくある質問

返還インボイスとは何ですか?
返品・値引き・リベートなどで売上げの代金を返したり減らしたりしたときに、インボイスの登録事業者である売手が買手に渡す書類です。正式には適格返還請求書といいます(消費税法57条の4第3項)。
返還インボイスに宛名は必要ですか?
必要ありません。記載事項は、登録事業者の名称と登録番号、返還等の年月日ともとの売上げの年月日、内容、税率ごとの金額、消費税額または適用税率の5つです。
1万円未満なら返還インボイスは不要ですか?
税込1万円未満の対価の返還等は交付義務が免除されます。振込手数料だけでなく、返品・値引き・リベートも対象です。判定は商品ごとではなく、返金額または請求・債権の単位ごとの減額で行います。
請求書と返還インボイスを1枚にできますか?
できます。両方の記載事項を満たしていれば1枚でよく、継続適用を条件に、差し引いた差額とその消費税額を税率ごとに書く方法も認められています(国税庁Q&A問62)。
部品商からのリベートの返還インボイスは誰が出しますか?
リベートを払う部品商が出します。受け取る側が奨励金請求書を作る場合は、その書類に部品商の名称・登録番号など返還インボイスの事項が書かれていれば、部品商は別に交付しなくてよいとされています(問63)。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月26日時点で国税庁等の公表資料を確認したものです。個別の取引の税務判断を示すものではありません。実際の申告・経理処理は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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